アークティック・スウェーデン

物語が生まれる地

スウェーデンの北極地域「アークティック・スウェーデン」

夏の沈まない太陽や、冬の夜空を彩る神秘的な光。奥深い森や手つかずの大河、そして遥かなる地平線が続く大地。夏は穏やかで明るく、冬は無数の星が煌めくドラマチックな風景に出会える―。

それが、スウェーデンの北極地域「アークティック・スウェーデン」です。その雄大な自然と究極の四季が生み出す幻想的な世界は、数々の物語の舞台にもなっています。

アークティック・スウェーデン、スウェディッシュ・ラップランド、ノールランド(Norrland)……。スウェーデンの北極地域を指す呼称はいろいろあります。ここでは、ヴェステルボッテン(Västerbotten)、ノールボッテン(Norrbotten)、ラップランド(Lappland)の北部3地方を合わせてアークティック・スウェーデンと呼んでいます。

この3地方の総面積は約151,466平方キロメートル。国土の約3分の1に当たります。しかし、人口はわずか65万7,000人で、全人口の6.5%に過ぎません。ラップランドはスウェーデン最大の面積を持つ地方ですが、1平方キロメートル当たりの平均居住者数は2.2人という少なさです。

北極ならではの絶景に出会える

アークティック・スウェーデンの白夜
アークティック・スウェーデンのオーロラ

 

少ない人口と広大な面積という組み合わせが、西ヨーロッパ最大規模の荒野を形成しています。大半の地域に未開発で手つかずの自然が残されていることから、訪問者は他の西ヨーロッパ地域では体験し得ない静寂と絶景を堪能することができます。また、スキーやトレッキング、清流での釣りなどのアウトドア・アクティビティにも事欠きません。

北極圏近辺に位置するアークティック・スウェーデンでは、劇的な四季の変化が見られます。夏の間、太陽は完全に沈むことなく、一日中日差しを楽しむことができます。これが白夜といわれる現象です。

一方、冬は昼間でも太陽が昇ることはありません。しかし意外かもしれませんが、最も暗い時期でも真っ暗闇になるということはほとんどありません。太陽は日中かすかな薄明かりを放ちながら、地平線の下に潜伏しているのです。そして夜には、雪に覆われた大地が満天の星の光で輝きます。

さらに運が良ければ、息を呑む美しさで知られるオーロラが楽しめます。自然は光をきらめかせながら別世界の様相を見せ、華麗な光のショーを繰り広げます。

雪の多い冬のアークティック・スウェーデンにあって、ラップランドの最も有名な観光スポットといえば、ユッカスヤルヴィ(Jukkasjärvi)にあるアイスホテルでしょう。氷と雪で造られた世界最初で最大のホテルです。1990年にオープンして以来、世界中から多くの観光客を引き寄せ、日本からも毎年多くの人が訪れています。ここでの宿泊をご希望なら、十分に余裕を持って早めに予約されることをお勧めします。

サーミの豊かな文化を体験

アークティック・スウェーデンは、トナカイの遊牧や独創的な手工芸品で知られるスカンジナビアの少数民族サーミ人のホームランドでもあります。冬のシーズン中には、例えばトナカイが引くソリで大地を駆け抜けるツアーなど、たくさんのアクティビティも用意されています。ここを訪れる人は、伝統文化、音楽、手工芸品、珍味など、さまざまなサーミの文化に触れ親しむことができます。

サーミの人々は時代の変化に対応しつつも、自分たちの文化的遺産を忘れずに生活しています。アークティック・スウェーデンでは、バラエティに富んだサーミの文化も体験できるのです。

サーミの文化トナカイの遊牧
アークティック・スウェーデンの木の実
ヴェステルボッテン・チーズを食べる女性

母なる自然が育む新鮮な食材

野生の動植物が豊富なアークティック・スウェーデンは、食文化の面でも独自の魅力を放っています。トナカイやヘラジカは、鮭やトラウト、ニシンなどの魚介類同様、四季を通じた食卓の人気メニューです。白マス(Vendance:ベンデース)の卵であるカーリックス・ロイロム(Kalix Löjrom)は、スウェーデンで唯一、原産地名称保護制度(PDO)で認定されている食料品。モダン・スカンジナビア・レストランなどでは、キャビアと同じように扱われています。

広大な森にはさまざまな木の実やキノコが自生し、「自然享受権」というスウェーデンの慣習法により、誰でも自由に摘み取ることが許されています。そして忘れてはならないのが、ヴェステルボッテン・チーズ。ヴェステルボッテン地方産の濃厚な風味のハードチーズで、スウェーデンでは「チーズの王様」と呼ばれているほどです。この地を訪れる際には、ぜひ試食してみることをお勧めします。

伝統産業と先端産業の共栄

約1,000万人という少ない人口にも関わらず、スウェーデンは多方面で世界に存在感を示しています。イケア、H&M、ボルボ、Spotifyなどの世界的企業や、ABBAをはじめとした多数のアーティストを輩出した国、ノーベル賞を授与する国としてよく知られています。

北極地域の主要産業もまた、グローバルな競争力を有しています。ヴェステルボッテン地方とノールボッテン地方はアークティック・スウェーデンの産業開発地域です。ここには、自然資源、特に木材と鉱石が豊富にあります。ヴェステルボッテンはヨーロッパ随一の金資源を持つ地域で、ノールボッテンは主に鉄などの鉱石資源に恵まれています。この充実した一次産業が、スウェーデンの優れた機械工業や工具製造業の誕生につながりました。

北部スウェーデンの電力は、多くの河川を利用した水力発電でまかなわれ、競争力のある価格で提供されています。Facebookなどの企業がこの地に環境にやさしいデータセンターを置いているのは、寒冷な気候によることもありますが、電気料金が安価なことが主な理由です。

近年は、マルチメディア、ウェブ、ゲーム、ソフトウェア開発などのIT分野や、デザインなどのクリアティブ分野で、若い世代のベンチャー企業が続々と生まれています。この地域の2大沿岸都市であるウメオ(Umeå) とシェレフテオ(Skellefteå)が、このトレンドを積極的に推し進めてきました。

しかしこの傾向は、実はそれほど現代的な考え方から生まれたものではありません。アークティック・スウェーデンの人々は昔から、寒くて暗く長い冬の間、何かを改善したり、新しい物を創り出したりしながら室内で時を過ごしてきました。ITやクリエイティブ分野で成果を上げているのも、そうした伝統と深くつながっているのです。

長い産業の歴史、すべてを包み込む圧倒的な自然、伝統的な手工芸品、そして長く受け継がれてきたイノベーションの系譜――これらすべてが、活気に満ちたスウェーデンのアークティック・デザインを生み出す礎になっているのです。 

スウェーデンの伝統的な手工芸品